推測ではなく、物理で計算する。
コース、レース当日の天候、あなた自身の数字を同じパワー方程式に入れ、区間ごとに何ワットで踏むか、どれだけ時間がかかるかを解きます。このページでは仕組み、精度、できないことを説明します。
デモ:FTP 250W・68 kg・トライアスロンバイク。色=6 段階のパワー、線=区間ごとの目標ワット、下の矢印=各区間の風。グラフをなぞると読み取り値が付いてきます。
入れるもの
ENGINE
出てくるもの
計算に必要なのは 4 種類のデータだけ。
どれも最小限の項目だけで構いません。空欄は妥当な既定値が入り、後から詰められます。
コース
- 211 本の実在コース:IRONMAN の大半の大会+Challenge、226 も 113 も。自分の GPX も計算できます
- 区間ごとの勾配は軌跡から実算。公式発表の総獲得標高を入れると、水増しされた標高を比例で戻します
- コーナーは本当に減速が必要な曲がりだけを数えます:方向変化 60° から速度を制限し、曲がりが急なほど上限を低くします。Uターンは 1 回 180° として数えます
あなた
- FTP・体重・身長・車重:最低限この 4 項目
- CdA:車種とポジションから表引きするか、パワー付きの走行ファイルから自分の値を逆算
- タイヤと路面で転がり抵抗が決まり、最軽ギアで登りの最低速度が決まります
天候
- レース日とスタート時刻を選ぶと、気温・湿度・気圧・風向風速を自動取得
- 空気密度は区間ごとに計算:暑いほど、湿るほど、高いほど空気は薄くなります
- 風向は各区間の進行方向に換算し、向かい風・追い風・横風をそれぞれ計算
目標
- レース種別で、どれだけ強く走るか、T2 の何 km 手前から緩めるかが決まります
- 強度は固定の表ではなく、このコースをおおよそ何時間走るかで決めます:長いほど維持できる強度は下がります
- 戦略の控えめ/標準/攻めの違いは、登りで平地よりどれだけ多く踏むかだけです
1 本の方程式。すべての数字に出どころがあります。
教科書にある自転車のパワー方程式で、ブラックボックスではありません。エンジンの仕事は各項を区間ごとに正しく計算し、そこから逆に問うこと:この区間を何ワットで踏めば合計時間が最短か。
平地を 37 km/h で走ると、力の 84% は空気を押しのけるのに使われます。だから CdA はこの式で最も重要で、最も狂いやすい項です。
動かしてみてください。同じ 35 km/h でも、勾配と風が変わると 3 つの抵抗の比率がまるごと入れ替わります。デモ値 68 kg・車体 9 kg・CdA 0.245・Crr 0.004・空気密度 1.18。
6 段階。各区間に与えるのは 1 つだけ。
各レベルは目標 NP の固定倍率です。走行中はサイコンに出るレベルとワット範囲を見るだけでよく、数字を覚える必要はありません。貼るカードも同じ色です。
登りで少し多めに踏み、下りで抜くのが物理的に最も時間を節約します。差が大きいほど節約は増え、代わりにランの序盤が辛くなるので、戦略で調整するのはこの 1 点だけです。
短い急坂は立ち漕ぎで押し切れます。長い登りをその強度で持たせられないなら、エンジンは持てるレベルまで下げ、頂上で潰れる指示は出しません。
向かい風の区間は自動で 1 段上がり、追い風の区間は下がります。同じ登りでも、向かい風と追い風でレベルが違うことがあります。
最後の数 km は意図的に 1 段下げ、脚をランに残します。緩める距離はレース種別によって変わります。
同じ FTP でも、踏むべきワット数はコースごとに違います。
コースをタップすると坂の分級が見えます。平坦コースは一定パワーが最速。山岳コースは坂ごとに踏むべき数字が違います。
デモ:FTP 250W・68 kg・トライアスロンバイク。色=6 段階のパワー、線=区間ごとの目標ワット、下の矢印=各区間の風。グラフをなぞると読み取り値が付いてきます。
天気の出どころは 2 つ。レースまでの日数で切り替わります。
レース 9 日前以内
毎時予報
国の気象機関の毎時予報を、あなたが走る時間帯に合わせます。レース前に再計算すれば、配分は当日の風で更新されます。
それより前
複数年の同時期の実測平均
同じ時期・同じ時間帯の複数年の実測記録から、典型的な気温・湿度・風を求めます。ランキングの暑さと風の減点も同じデータです。
風も、坂です
向かい風は登りと同じで、押すべきところ。追い風は下りと同じで、抑えるべきところです。エンジンは各区間の風向きと風の強さを段階に織り込み、Kona の Queen K の向かい風区間は自動的に 1 段階上げます。ベテランだけがやっている走り方を、そのままあなたのプランに書き込みます。
風向は気象の慣例どおり「風が吹いてくる方向」で、平均は風速で重み付けしたベクトル平均です。350° と 10° を平均して 180° にはなりません。最寄りの気象観測所が遠すぎる場合(30 km 超)、結果ページに「遠い」と表示されます。プランの作成にはその風をそのまま使いますが、コース上の風と同じとは限りません。バックテストと CdA の逆算では無風として扱います。バックテストで誤差が最大だった数レースの共通原因はこれです。
CdA は、あなた自身のレースから求める。
表引きでは範囲しか分かりません。パワー付きのレースファイルをアップロードすると、エンジンは同じ方程式を逆向きに解きます:パワー、速度、勾配、その日の風が分かっているので、あなたの空気抵抗面積が求まります。
実走ファイル 64 本のリプレイで、バイクタイムの誤差が ±5% 以内に収まった割合。逆算には同じ選手のほかのレースのファイルだけを使い、そのレース自体のファイルは使っていません。
イメージ:レースを 1 本アップロードするごとに、収束値の誤差帯が少しずつ狭まります
各推定には誤差範囲と使える区間数が付きます。複数の推定は 1 つの収束値にまとめられ、信頼できるものほど重く扱われ、車種とポジションは別々に計算されます。CdA とは →
風洞と一度だけ照合:差は 0.8%。
2026 年 1 月、私たちが指導している選手(226 の完走タイム 8:17)が、香港科技大学の空力音響実験施設(AAF)の風洞でレース機材を計測しました。半年後、彼は IRONMAN Hamburg に出場し、私たちはそのレースのパワーファイルを AeroPacer に入れました。エンジンは風洞の結果を見ずに、彼の CdA をそのまま逆算しています。これは 1 人、1 レースでの確認です:
注:これは n = 1 の確認で、精度の保証ではありません。風洞の値はヨー角 0°、固定ポジションでの単点計測です。レースからの推定は 4.3 時間の実際の走行を含むため、両者がもともと完全に一致することはありません。転がり抵抗の想定値が 0.0005 違うだけで CdA は約 0.005 変わり、今回の差より大きくなります。つまり 0.8% には運も含まれています。データから言えるのは、風洞の値が推定範囲の中に入っていて、しかも中央に近いということです。単発の推定の精度はファイルの品質によります(平坦、ドラフティングが少ない、安定した巡航が最も正確)。サブスクリプション版の複数記録の収束は、データ量が増えるほど範囲を狭めていきます。
実走ファイル 64 本をリプレイして、物理モデルの精度を確かめた。
方法:9 人が 2019〜2026 年に 15 の国と地域で走ったパワーファイル 64 本(レース 61 本、長距離トレーニング 3 回)を使い、当日実際に出したパワーと当日の天候をエンジンに入れ直して、計算したバイクタイムが実際とどれだけ違うかを見ました。公平を期すため、その選手の CdA は必ず「ほかのレース」のファイルだけから逆算し、そのレース自体のファイルは見ていません。
1 点が 1 本。横軸はバイクタイムの誤差。濃い色=±2% 以内、中間色=±5% 以内、それ以外は ±5% 超。
偏りはコース次第です。平坦なコースでは遅めに出ることが多く(18 本の平均で 2.2% 遅い)、起伏の多いコースではほぼゼロ。誤差が大きくなる 2 つのケース:近くに気象観測所がなく風が強かった日、そして機材やポジションを変えたばかりで CdA のデータがまだ十分でない選手です。ここで確かめているのは「パワーがわかっているときのタイム計算」です。レース前の予測では、目標パワーどおりに走れるか、予報が当たるかという誤差がさらに加わります。検証の方法を見る →
制約になるものは何か
コースデータの出どころ
公式レースページのルート、公式 GPX、コミュニティの公開ルート。獲得標高は軌跡から実算し、各コースに検証レベルを表示します。
一部のコースの標高は Copernicus DEM GLO-30 によるものです:© DLR e.V. 2010–2014 および © Airbus Defence and Space GmbH 2014–2018、欧州連合と ESA が Copernicus プログラムのもとで提供、無断転載禁止。
用語
- FTP
- 全力で 1 時間、ずっと維持できるくらいのワット数です。このプランのワットはすべてここから計算されます。
- CdA
- あなたとバイクが、風から見てどれだけ大きいかということです。低く、細くなるほど数字は小さくなり、必要なパワーも減ります。平坦では抵抗の 8 割以上がここから来ています。
- Crr
- タイヤが路面を転がるときに、路面に取られる力です。タイヤが良く、路面が滑らかなほど、この数字は小さくなります。
- NP
- 上下に振れるワットを、「同じくらいきつく感じる」一定のワットに換算したものです。
- IF
- NP ÷ FTP。つまり、このライドがあなたにとってどれくらいきついかということです。
- TSS
- ライド全体がどれだけ体に効いたか。強度と時間をあわせて数えます。100=全力で 1 時間。
- VI
- NP ÷ AP。1.00 に近いほど均等に走れています。
- 収束値
- あなたの推定をすべてまとめた代表値です。プラン作成にはこれを使います。
- 誤差範囲
- 本当の値はこの範囲のどこかにあります(±)。範囲が狭いほど、確からしいということです。
- 使える区間の数
- このファイルの中で、十分に安定して走れていて計算に使える区間がいくつあるかです。多いほど信頼できます。
- スピードスコア
- このコースでいいタイムを出しやすいかどうかを 0〜100 で表したものです。登りが多い、コーナーが多い、暑い、風が強いといずれも減点になります。
- 区間別ペーシングで得られるもの
- 同じ強度のとき、区間ごとに調整するプランが、最初から最後まで一定ワットで走る場合より何秒速いかということです。
読み終えたら、自分のコースで計算してみる。
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