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IRONMAN と 70.3 のバイクパートは何ワットで走るか:IF の決め方と登りの踏み方

FTP 250 W の選手が、平坦・無風の 180 km を IF 0.70 で走ると 5 時間 4 分かかります。IF を 0.74 に上げると 4 時間 57 分 44 秒に縮まります。10 W 多く踏んで、手に入るのは 6 分ちょっとです。
この 6 分を別の角度から見てみます。そのせいでマラソンの後半に持ちこたえられず 3 km 歩いたとしたら、1 km あたり 5 分 30 秒が 10 分に落ち、この 3 km だけで 13 分半を失います。フルディスタンスのバイクパートのペーシングで計算を間違える人は、たいていここでつまずいています。
IF とは
IF(Intensity Factor、強度係数)は、そのライドの正規化パワー NP をあなたの FTP で割った値です。FTP はおおよそ 1 時間持続できるパワーなので、IF 1.00 は 1 時間のタイムトライアルの強度です。IF 0.70 は FTP の 7 割で走っているという意味です。
平均パワーではなく NP を使うのは、強弱のある走り方のほうが一定で走るより疲れるからです。同じ平均 200 W でも、半分の時間を 150 W、半分の時間を 250 W で踏むと、NP は 217 W 前後になり、体が感じる負担も 217 W に近くなります。
自分の IF はどれくらいにすべきか
持続できる IF は時間で変わります。2 時間半走るのと 5 時間半走るのとでは、耐えられる強度がかなり違います。だから同じフルディスタンスでも、4 時間 30 分で走る選手と 6 時間かかる選手の IF は同じであるべきではありません。下の表は、AeroPacer が予想バイクパート時間に応じて出す推奨範囲です。
| 70.3 バイクパート時間 | 推奨 IF | フルディスタンス バイクパート時間 | 推奨 IF |
|---|---|---|---|
| 2:15 | 0.82–0.86 | 4:30 | 0.70–0.74 |
| 2:30 | 0.81–0.85 | 5:00 | 0.69–0.73 |
| 2:45 | 0.79–0.83 | 5:30 | 0.67–0.71 |
| 3:00 | 0.78–0.82 | 6:00 | 0.66–0.70 |
| 3:30 | 0.76–0.80 | 7:00 | 0.64–0.68 |
この表は「バイクを降りたあとにまだ走る」ことをすでに織り込んでいるので、フルディスタンスは同じ時間を走るだけのタイムトライアルより一段低くなっています。範囲のどちら寄りにするかは、3 つのことで決めます。
- この距離が初めて、あるいはロングライドの練習量が足りない人は、下限寄りに。
- とても暑いレースでは、同じパワーでも心拍数が上がりやすいので、やはり下限寄りに。
- ランが得意で、バイクを降りてから追い上げる人は、なおさらバイクパートで使いすぎないように。
表の数字よりも大事なことがもうひとつあります。FTP そのものが正確であることです。FTP を 5% 高く見積もっていると、表どおりに走った IF は実際には 5% 高くなり、フルディスタンスの 0.70 は 0.735 になります。レース前 1 か月以内に測った FTP を使うのが理想です。
IF を 0.04 上げると、どれだけ違うか
0.62 から 0.78 まで、0.04 上げるごとにおよそ 6〜7 分半縮みますが、上に行くほど縮み方は小さくなります。空気抵抗は速度の 2 乗で増えるので、増やしたパワーのうち空気を押しのけるのに使われる割合がどんどん大きくなるからです。
だから、バイクパートで数分速く走る代償は、ランと合わせて考える必要があります。フルディスタンスのマラソンは、バイクパートでたまった疲労の上に走るものです。バイクで余分に使った力は、たいてい降りたあと、もっと多くの時間で払うことになります。バイクで 6 分稼ぎ、ランで歩いて 13 分返す。この計算はどうやっても割に合いません。
なぜ最初から最後まで同じパワーで踏まないのか
IF が決めるのはレース全体の強度で、どの区間も同じワット数で踏めという意味ではありません。アップダウンのあるコースでは、登りで少し多めに踏み、下りで少し控えたほうが、同じ NP でも速くなります。
理由は時間の配分にあります。登りは速度が遅いので、登りで過ごす時間は下りの 2 倍以上です。そこで増やした 1 W 1 W は、より多くの秒数に換わります。下りは速度が速く空気抵抗が大きいので、多く踏んだワットの大半は空気に食われ、速度にはあまり換わりません。だから NP が同じなら、力を下りから登りへ移したほうが全体として速くなります。
ただし、この方向には上限があります。登りで FTP を大きく超えて踏むと、たまった疲労がレース後半に返ってきます。多めに踏む幅はほどほどにし、登りが長いほど抑えます。AeroPacer のレースプランはパワーを 6 段階に分け、坂ごとに勾配と長さに応じて違うワット数を割り当て、さらに控えめ、標準、攻めの 3 つの登りの戦略から選べるようにしています。急な下りには別に上限を設けています。そういう勾配では、もともとパワーをほとんどかけられないからです。
最後の数キロは緩めるべきか
緩めるべきです。第 2 トランジション(T2)に入る前の最後の数キロで強度を落とし、心拍数と脚を少し落ち着かせておくと、ランの最初の 1 km がしっかり走れます。踏むのを控えたこの数キロで余計にかかるのはたいてい 20〜30 秒ほどで、ランの最初の 1 km をスムーズに走れれば取り返せます。AeroPacer のレースプランはこの区間を自動で組み込みます。
数字をレースに持ち込む
目標 IF が決まったら、レース当日に見るべき数字は 2 つです。坂ごとに踏むべきパワーと、レース全体の累積 NP です。最初の 30 分はいちばん飛ばしすぎやすい時間です。脚がいちばん新鮮で、周りの人もみな飛ばしているからです。この時間帯はむしろ低めに抑えてください。
AeroPacer で自分のコースを選び、FTP、体重、CdA を入れると、レースプランが予想タイムから推奨 IF を計算し、区間ごとのパワーを割り振って、サイコンで見られるファイルに書き出します。まず平坦路の速度とタイムだけ計算したいなら、CdA 計算ツールを使えます。
冒頭の 6 分に戻ります。これは本当の数字で、平坦な 180 km なら IF を 0.04 上げるとそれだけ速くなります。ランでどれだけ返すことになるかは表では計算できず、自分がどこまで耐えられるかは練習のなかで知るしかありません。
あわせて読みたい:〈AeroPacer のバイクパートのタイムはどこまで正確か〉、〈速い IRONMAN コースはどこか〉。
