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空力ポジションの合わせ方:頭、肩、ひじ、背中、そしてどれだけ保てるか

次に長い距離を走って 3 時間目に入ったら、地面に落ちる自分の影を見てください。
頭は引っ込んでいますか、それとも持ち上がって風を受けていますか。両肩は内側に寄っていますか、それともハンドルと同じ幅に開いていますか。背中は 1 本のなめらかな線になっていますか、それとも途中で何か所も折れていますか。自分の乗車姿勢をレース写真でしか見たことがない人は多く、しかもその大半は、スタート直後のいちばん調子がいいときの写真です。
こうした問いに意味があるのは、走るときの空気抵抗のおよそ 8 割が乗っている人から生まれ、フレーム、ホイール、パーツを全部合わせても 2 割ほどにしかならないからです。メーカーは「フリースピード」を売るのが上手で、ホイール 1 セットが平気で数十万円します。それでも、正面から風を受ける面積がいちばん大きいのはずっとあなたの体で、ポジションの調整にはたいてい 1 円もかかりません。
空力に手間をかける価値はあるか
空気を押しのけるのに必要なパワーは速度の 3 乗に比例します。だから同じように CdA を 1 割下げても、速く走るほど節約できるパワーは大きくなります。下の表は、CdA を 0.30 から 0.27 に下げたとき、平坦・無風で節約できるパワーです。
| 速度 | 節約できるパワー |
|---|---|
| 20 km/h | 3 W |
| 30 km/h | 10 W |
| 40 km/h | 25 W |
40 km/h で 25 W の節約です。何年も練習してきた人なら、FTP を 25 W 伸ばすのに 1 シーズン、あるいはそれ以上かかるかもしれません。20 km/h では 3 W しか変わらず、ほとんど体感できません。獲得標高の大きい山岳レースに出る人や、平均速度がふだん 30 km/h を下回る人は、まずパワーと体重に取り組んでください。この記事の続きは後回しでかまいません。
CdA とは何か、0.01 の差が何分になるかは〈CdA(空気抵抗面積)とは何か〉で書いたので、ここではすぐポジションの話に入ります。
頭:ヘルメットと背中を 1 本の線につなぐ
頭は人とバイク全体のいちばん前、いちばん上にあり、持ち上げると傘を開いたような状態になります。よくあるのは、疲れてきてあごが前に突き出し、目線がまっすぐ前を向いているパターンです。
直し方は、頭を少し後ろに引いて、ヘルメットの後端を上背部のラインに沿わせることです。かといって引きすぎてステムばかり見つめるのもいけません。ヘルメットの後端が跳ね上がり、前の道も見えなくなります。プロ選手がエアロヘルメットを高めにかぶり、縁を眉の上に置いていることが多いのはこのためです。頭を低く引いたぶんヘルメットを高くかぶらないと、前の道が目に入りません。

肩:正面から見て、幅を狭くする
プロ選手を正面から見ると、肩を内側に挟み込んだようになっていて、上半身全体が小さくまとまっています。風から見えるあなたの幅が広いほど、抵抗は大きくなります。
アマチュアの多くは上半身の可動域が足りず、肩が自然と外に張り出して、アメフトのラインバッカーのようになっています。肩をすぼめるには練習が必要です。まずローラー台で鏡に向かって感覚をつかみます。肩を前に、内側にわずかに寄せ、上背部を少し丸める。それから保てる時間を少しずつ延ばしていきます。
ひじ:いちばん手をつけやすく、いちばんやりすぎやすい
DH バーのアームパッドの間隔を狭めると、正面から風を受ける面積もそれにつれて小さくなります。ポジション全体のなかで、いちばん手をつけやすいところです。縁の高いアームカップを使えば前腕が収まり、肩をすぼめた形を保ちやすくなって、乗っていても安定します。

ひじを狭くしすぎるとバイクが扱いにくくなり、横風や路面の荒れに出くわすたびに DH バーから手を離してハンドルに戻したくなります。180 km のなかで手を離す回数が増えれば、狭くして得たぶんはすべて帳消しです。だからひじは何回かに分けて狭めてください。1 回狭めるごとに慣れた道でロングライドを 1、2 回走り、コントロールできると確かめてから次に進みます。
背中:低くするほど速いとは限らない
ここまでの理屈をそのまま延ばせば、背中は平らに低くするほど速いはずです。実際はそう単純ではありません。
背中を平らにするほど股関節の角度は小さくなり、太ももを引き上げたときにお腹に当たって、出せるパワーが落ちます。2020 年のある実験室研究では、トレーニングを積んだ選手 11 人を調べ、上半身をいちばん平らにした条件では、閾値パワーが本人の慣れたポジションより 16 W 低くなりました。この研究では空気抵抗の減少でこの 16 W を取り返せていましたが、測ったのは短距離のタイムトライアルです。フルディスタンスのバイクパートは 5、6 時間続き、降りたあとにはまだ 42 km のランがあります。同じ角度をそれだけ長く保てるのか、その長さで実験した人はまだいません。

空力は個人差も大きいものです。同じように 2 cm 低くしても、速くなる人もいれば変わらない人もいます。体形も、バイクや空気との組み合わせも一人ひとり違うからです。プロのなかにほかの選手より高いポジションで乗る人がいるのもそのためで、痛いのが嫌だからとは限りません。実際に測って、少し高いほうが速かったという人もいます。
保てるポジションこそ、いちばん速いポジション
きれいな低いポジションでも、10 分ごとに体を起こして腰を伸ばさなければならないなら、レース全体で見れば空力的とはいえません。レースで問われるのは、4 時間目、5 時間目にまだ伏せていられるか、そしてバイクを降りたあとに脚がまだ走れるかです。

プロ選手も最初からあれほど低く伏せられたわけではありません。何年も、何千時間もかけて、体を少しずつ慣らしてきた結果です。だからポジションも FTP と同じで、練習が必要です。ロングライドのなかで DH バーを持ち続ける時間を少しずつ延ばし、あわせて股関節屈筋と胸椎の可動域、体幹のトレーニングを行います。新しいポジションにして最初の数週間は、首がだるい、腰が張るといったことはよくあります。まず体を慣らし、それからもっと低くするかを決めてください。
新しいポジションで速くなったか、どう確かめるか
風洞がなくても、パワーファイルがあります。サイコンを連携すれば、十分に平坦で安定していて、ひとりで走った屋外ライドについて、AeroPacer が自動で CdA を算出します(どのライドで出るかは〈サイコンを連携したあと、どのライドなら CdA が出るのか〉に書きました)。ポジションを変えたあとの比べ方は 3 つあります。
- 変える前と後で何本かずつ走ってから比べる。 1 本だけでは、その日の風や路面の影響を受けます。変える前と後でそれぞれ何本かためて、コースと機材はできるだけそろえ、CdA の傾向が下がっているかを見ます。
- 新しいポジションで走った区間だけで計算する。 ライドのグラフでその区間を囲めば、CdA はその区間だけで計算され、前後のウォームアップや市街地、信号待ちは混ざりません。
- レースの後半で大きくなっていないかを見る。 レースファイルを前半と後半に分けてそれぞれ計算し、後半が前半より数 % 高ければ、たいていポジションを保てなくなっています。
自分の数字がどのあたりにあるかは、〈CdA はいくつなら良いのか〉と比べてみてください。
次に 3 時間目に入ったら、もう一度地面の影を見てください。スタート直後と同じ形をしているかどうかは、どれだけ低く伏せているかより大事です。
